東京物語-六本木 (第二章)

東京物語-六本木  (第二章)

(第１章)

ジョンと離はなれてから一度いちどだって、安定あんていした幸しあわせ感かんに包つつまれたことなどなかった。しかし、それを今いま言いって、どうなるのだろうか。

和John分開之後，哪怕只是一次，像被安定的幸福感給包圍的感覺，幾乎再也沒有過。但是，現在說這些，又能如何呢？

 

「当あたり前まえじゃないの。この真美まみ様さまが幸しあわせでなくて、だれが幸しあわせ?」

「這不是當然的嗎？真美女王如果不幸福，那還有誰是幸福的呀？」

「違ちがいない!」

「沒錯！」

 

そして、時空じくうを越こえてまるでお互たがい見みつめ合あっているかのように息いきが合あった笑わらい声ごえがスマートフォン越ごしに響ひびいた。

然後，彷彿跨越了時間和空間，彼此就像面對面一樣，有默契的笑聲透過手機傳了出來。

今いま、私わたしがここにこうしていられるのは、ジョンのおかげだ。

現在，我之所以能夠在這裡，都是多虧了John。

 

親おやのいう通とおりの大学だいがくに進すすみ、親おやの言いう通とおりに就職しゅうしょくもせず、いつの日ひか迎むかえるであろう晴はれの日ひのために花嫁はなよめ修行しゅぎょうをしていた真美まみ。生うまれてからずっと、どこへ行いっても、必かならず父親ちちおやの名前なまえが出だされ、その娘むすめとして一目いちもくおかれ生いきてきた。まわりからは、セレブ生活せいかつなどと揶揄やゆされながらも、茶道さどう・華道かどう・お料理りょうり・フラワーアレンジメント・テーブルコーディネイト・英会話えいかいわなどの習ならい事ごと、そして、海外旅行かいがいりょこうに明あけ暮くれる生活せいかつを謳歌おうかしていた。そんな人生じんせいに疑問ぎもんを感かんじ始はじめたのは、外国人がいこくじんの友人ゆうじんが増ふえてからだ。だれも父親ちちおやのことなど気きにもしないし、聞きかれない。そうなると、気持きもちがスーッと楽らくになるのと同時どうじに、自分じぶん自身じしんが何者なにものなのか?何なにができるのか?を考かんがえたら、恐おそろしくなった。何なにもない自分じぶん・・・ちょうどそのような時期じき、青山あおやまにある会員制かいいんせいのスポーツジムで共通きょうつうの友人ゆうじんに紹介しょうかいされたのがジョンだ。アメリカの金融きんゆう機関きかんの日本にほん法人ほうじん代表だいひょうだというのに、ユーモアあふれる気きさくな紳士しんしというのが、真美まみのジョンに対たいする第一印象だいいちいんしょうだった。

聽從父母意見選擇大學、接著又照父母所說，不踏入社會就職，而是選擇為了在未來迎接特別的那一天，進行新娘修業。這樣的真美，從出生以來，不管到哪裡，總是會被提起父親的名字，身為女兒也讓周遭的人禮遇著。被周遭人揶揄自己過的是「名媛生活」，一邊學習茶道、花道、烹飪、插花、餐桌佈置、英語會話等等才藝，接著，在國外旅行，享受著每日平穩的晨昏生活。而開始對這樣的人生感到疑惑，是從外國朋友開始增加的時候。沒有人會在意父親的身份之類的、也不會特別的問。變成這樣之後，對於心情感到變得清爽的同時，突然開始思考「自己到底是什麼人？」、「能做什麼事？」一想到這些，開始覺得害怕了起來。什麼都沒有的自己…在那種狀態的當時，在青山某個會員制的健身房透過彼此共通的友人介紹而認識了John。明明是在美國金融機構的日本法人代表，但卻是個幽默親切的紳士，這是真美對John的第一印象。

 

まさか愛あいし合あう関係かんけいになるとは思おもってもいなかった。しかし、真美まみの持もっている知識ちしき・スキルが活いかせる仕事しごととして、アメリカでは既すでにポビュラーになっていたパーティーコーディネイターの話はなしをしてくれたのがジョンだった。好すきなことが仕事しごとになるということに真美まみは胸むねを躍おどらせた。それからの数年間すうねんかんは、瞬またたく間まに過すぎた。そして、真美まみのビジネスの成長せいちょうとともに、二人ふたりの関係かんけいも急速きゅうそくに進すすんでいった。そして、それは永遠えいえんに続つづくように見みえた。

幾乎完全沒有想過二人竟然會變成是相愛的關係，但是能夠運用真美所擁有的知識、技能的工作，正是在美國已經很受歡迎的「宴會規劃師」，這件事是John告訴真美的。「喜歡的事情可以成為自己的工作」，這件事讓真美的心中很是雀躍。在那之後的好幾年，就像瞬間般過去。隨著真美的事業開始成長，二人的關係也急速地前進，這一切就像會一直這麼持續下去似的。

 

ところが、パーティーコーディネイターとしての真美まみがマスコミでも取とり上あげられはじめ、後継者こうけいしゃ育成いくせいを目的もくてきにスクールを設立せつりつしようという動うごきが出でてきた時とき、二人ふたりは選択せんたくを迫せまられることになったのだ。ジョンに米国べいこく本社ほんしゃの取締役とりしまりやくというポストが用意よういされ、帰国きこく命令めいれいが下くだったのだ。

就在這時，隨著身為宴會規劃師的真美出現在媒體的機會增加、接著要開始準備設立接班人養成的學校之時，二個人被迫面臨了選擇。John接到美國總公司的命令，要他回美國接下董事的職位。

 

ジョンは、一緒いっしょに行いこうと友人ゆうじんのだれもが羨うらやむような素敵すてきなプロポーズもしてくれた。しかし・・・真美まみには、捨すてられなかったのだ。父親ちちおやの手てを借かりずに築きずき上あげた自分じぶん自身じしんの地位ちい、名声めいせい、ビジネス、そして、不安ふあんでたまらないが一ヶ月後いっかげつごに開校かいこう予定よていのスクール。ジョンと一緒いっしょに行いけば、安定あんていした幸しあわせがあるだろう。しかし、スクールは諦あきらめるしかない。やった後悔こうかいは徐々じょじょに小ちいさくなるが、やらなかった後悔こうかいはだんだん大おおきくなると、何なにかに書かいてあった。やっと手てに入いれた「真美まみ」としての生いきる道みちは、捨すてられなかった。

John以當時一起的所有朋友都非常羨慕的美好求婚方式求婚了，但…真美實在沒有辦法割捨，不依賴父親的自己所建構出來的地位、名聲、事業。接著，雖然不安感一直無法壓抑，但也來到了開校的前一個月。如果和John一起去美國的話，應該會很安定、幸福吧？可是，那樣一來就只有捨棄學校這一途。做了而後悔的感覺可能會慢慢地變淡；但若是不做，那後悔會漸漸越來越深，那又能寫下什麼呢？好不容易得到專屬於真美的生存之道，最終還是沒能割捨掉。

 

「真美まみ、聞きいている?」

「真美，有在聽嗎？」

「うん。聞きいてるよ。」

「嗯，我有在聽～」

「素敵すてきなボーイフレンドは、できた?」

「交了很棒的男朋友沒有呢？」

「そうねぇ。たくさんいるけど・・・ジョンは?」

「這個嘛…是不少啦…John呢？」

 

外務省がいむしょうに勤つとめている気きの強つよい女性じょせい、甘あまえん坊ぼうの女医じょいさん、そして、ダイエットが趣味しゅみだという弁護士べんごしさんなどと、たまにデートしていることをジョンはユーモアを交まじえて話はなした。

像是在外務省工作的強悍女性、愛撒嬌的女醫師、甚至是把減肥當成興趣的律師…等等的，John加上幽默的方式說著偶爾和她們去約會的事。

 

ひとしきり、ジョンの恋話こいばなしに盛もり上あがり、

轉眼之間，因為John的戀愛情事，氣氛變得熱絡了起來。

 

「結婚式けっこんしきには必かならずいくわよ。」

「結婚典禮我一定會到喔！」

と真美まみが言いった、その時とき。

就在這時候，真美這麼說著。

 

「真美まみ、こっちに来こないか?こっちにいても、今いまの真美まみなら、仕事しごとは続つづけられる。それに・・・」

「真美，要不要來我這裡？就算是在這裡，如果是現在的真美，也可以繼續工作的，而且…」

「それは、できないわ。ジョン・・・」

「那是不行的，John…」

 

グラスに残のこっていた赤あかワインを一気いっきに飲のみ干ほし、上質じょうしつな白しろい革かわのソファから立たち上あがった。

把玻璃杯裡剩下的紅酒一飲而盡，接著，從那上等白色皮革沙發上站了起來。

 

「それは、もう・・・」

「那件事情，已經…」

 

続つづく

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晴はれ / 明朗

表立おもてだって晴はれやかなこと。おおやけのこと。また、そのような場所ばしょ。結婚けっこんや受賞じゅしょうなどお祝いわいの主役しゅやくになること。晴はれ着ぎは、晴はれの日ひに着きるもの。

將事物公開明朗化、向大眾公開的事物或是場所；或是在結婚、頒獎之類的典禮上擔任主角；而日文的晴れ着指的是在這樣的日子裡所穿的衣著、禮服。

 

一目いちもく置おかれる / 受到禮遇、禮讓；敬畏

「一目いちもく置おく」の受うけ身み形けい。「一目いちもく置おく」は、自分じぶんより相手あいてが優すぐれていることを認みとめ、一歩いっぽを譲ゆずる。

禮遇、禮讓的受身形，原形是「一目置く」，指的是接受比自己在某些方面優秀的人而退讓一步；或敬畏。

 

揶揄やゆ / 揶揄

からかうこと。なぶること。嘲弄ちょうろう (ちょうろう) 。「世相せそうを―する」

嘲諷、戲弄，例：「嘲弄社會上的事物」。

 

胸むねを踊おどらせる / 心中感到雀躍

喜よろこびや興奮こうふんなどで胸むねをわくわくさせる。

因開心或是興奮而感到胸口砰砰地跳。

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日語造句:

• 娘むすめの晴はれれ姿すがたを見みるまでは、元気げんきでいたい。
  在看到女兒穿上禮服之前，希望能夠健康的活著。
• 彼かれは、だれもが一目いちもく置おく政治家せいじかだった。
  他曾經是個不管任何人都得敬畏三分的政治家。
• 世相せそうを揶揄やゆした漫画まんがを描かいた。
  畫了嘲諷社會的漫畫。
• 初はつの海外かいがい旅行りょこうを前まえに胸むねを躍おどらせています。
  在第一次的出國旅行之前，心中一直雀躍不已。

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文: mayumi, 翻訳: Shinn, 録音: hasegawa